Uターン転職とは、生まれ育った地域を離れて都市部などで働いたあと、再び故郷に戻って働くことを指します。Iターン転職とは、出身地とは異なる地域へ移住して働くことを指します。
「地元に戻って家族の近くで暮らしたい」「よりよい勤務条件や生活環境を求めたい」などの理由から、Uターン・Iターン転職を検討中の方もいるでしょう。
しかし、地域によって医療体制や勤務環境は異なります。地方への転職で働き方が大きく変わる可能性があるため、転職後の生活まで含めて慎重に検討することが大切です。
この記事では、医師がUターン・Iターン転職するメリットや注意点、転職を進める際のポイントをまとめました。実際の転職事例も紹介するので、地方での勤務や今後のキャリアを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
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医師がUターン・Iターン転職するメリット

医師がUターン・Iターン転職をすると、働き方や収入、生活環境などが改善する可能性があります。
ここでは、医師がUターン・Iターン転職する主なメリットを紹介します。
- 柔軟に働きやすい
- 年収が上がる可能性がある
- 生活コストを抑えやすい
- 地域医療に貢献できる
それぞれのメリットを、順に詳しく見ていきましょう。
柔軟に働きやすい
Uターン・Iターン転職では、医師の需要の高い地域を選ぶことで、柔軟な働き方を実現できる可能性が高まります。
医師の確保に力を入れている医療機関では、週4日勤務や当直の免除、時短勤務など、医師が働き続けやすい勤務条件を用意しているケースも多いです。好条件で転職できれば、都市部で働いていたときよりもゆとりのある働き方を実現できるでしょう。
また、Uターンの場合は、実家の近くで暮らせることもメリットです。子育て中であれば家族のサポートを受けやすくなったり、高齢になった両親の近くで生活できたりと、仕事とプライベートを両立しやすくなります。
ただし、地方だからといって必ずしも勤務負担が軽くなるとは限りません。医療機関によって勤務体制は異なるため、求人ごとの条件を詳しく確認しましょう。
以下の記事では、医師のワークライフバランスについて詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
医師のワークライフバランス|診療科別の実態と今すぐできる改善策を紹介
年収が上がる可能性がある
Uターン・Iターン転職によって、年収が上がる可能性もあります。
医師の確保が難しい地域では、人材を呼び込むために、都市部よりも高い給与水準を設定している医療機関があります。また、医師のニーズが高い地域や診療科では、給与だけでなく、勤務日数や当直の回数などについて希望を相談できるケースも。
ただし、給与水準は診療科や経験、業務内容、勤務条件などによっても異なります。「地方へ転職すれば年収が上がる」と考えるのではなく、複数の求人を比較し、業務内容と待遇のバランスを確認してみましょう。
生活コストを抑えやすい
生活にかかる費用を抑えられることも、Uターン・Iターン転職のメリットです。
転職先のエリアによっては、都市部と同程度の家賃でも、より広い住居を選べる場合があります。借り上げ住宅や住宅手当、赴任手当などが用意されているケースも少なくありません。単身赴任で着任する場合には、帰省費用の補助を受けられることもあります。
転職先を比較する際は、住居費をはじめとした生活費や各種手当まで含めて考えると、転職後の暮らしをイメージしやすくなるでしょう。
地域医療に貢献できる
Uターン・Iターン転職では、地域に根差した医療に携われることもメリットです。
地域によっては通常の患者対応に加えて、在宅医療や健診、学校医など、幅広い役割を担う機会があります。住民の健康を支えている実感を得られるので、地域医療への貢献にやりがいを感じる方には大きな魅力です。
また、詳しくは後述しますが、医師の充足状況は地域や診療科によって同じではありません。都市部で培った専門医としての知識や経験が、転職先の地域でより強く求められるケースもあります。
医師がUターン・Iターン転職する際の注意点

Uターン・Iターン転職にはさまざまなメリットがある一方、地域や勤務先によっては以下のようにキャリアや働き方、家族の生活に影響が出る可能性もあります。
- 最先端の治療に携わる機会が減る可能性がある
- 業務負担が増える場合がある
- 家族の仕事や子どもの教育に影響する
転職後に後悔しないために、あらかじめ注意点を確認しておきましょう。
最先端の治療に携わる機会が減る可能性がある
Uターン・Iターン転職によって、最先端の治療や高度な専門医療に携わる機会が減る可能性があります。最新の設備や専門性の高い症例は、大学病院や都市部の大規模な病院などに集まりやすいためです。専門性をさらに高めたい場合や特定の症例を経験したい場合は、希望する医療に携われる環境があるか事前に確認しておきましょう。
また、地方勤務の場合、都市部で開催される学会や研修会への参加に移動時間や交通費がかかります。学会参加のための休暇制度や、交通費・宿泊費の補助についても確認しておくと安心です。
業務負担が増える場合がある
転職先の状況によっては、必ずしも業務負担が軽くなるとは限りません。
医師が少ない地域では、一人の医師が幅広い診療を担ったり、当直やオンコールの負担が大きくなったりする場合があります。求人票の情報だけで判断せず、実際の勤務状況まで確認しておくことが大切です。
例えば、当直回数やオンコールの頻度に加えて、実際の呼び出し回数、常勤医の人数、非常勤医師の応援体制などもチェックしておきましょう。転職エージェントを利用している場合は、担当者を通して確認することが可能です。
家族の仕事や子どもの教育に影響する
家族と一緒に移住する場合は、家族の生活環境についても考える必要があります。
例えば、移住によって配偶者の転職や働き方の変更が必要になることがあります。子どもがいる場合は、学校や塾の選択肢、通学環境なども地域ごとに差が大きいため、進学まで見据えて検討しましょう。
可能であれば、赴任を決める前に家族で現地を訪れて、周辺環境を実際に確認しておくと安心です。学校や進学事情については、その地域の事情に詳しい医療機関の事務担当者から情報を得られることもあります。現地訪問が難しい場合は、Webでのカジュアル面談などを活用して情報収集するのもおすすめです。
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医師の充足状況は地域によって異なる

「令和6年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、日本の医師数は令和4年から令和6年までの期間に1.3%増加しています。また、人口10万人あたりの医師数も増えており、医師数そのものは増加傾向にあります。
一方で、医師数は全国に均等に分布しているわけではありません。現在の医療における課題の一つが、地域によって医師の充足状況に差が生じる「医師の偏在」です。
国もこうした医師の地域偏在を課題としており、「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」の策定など、解消に向けた取り組みを進めています。
参考:
厚生労働省|令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
厚生労働省|医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ
都道府県による差
医師数の地域差を把握することを目的に、厚生労働省では「医師偏在指標」を設定しています。人口や医療の需要、患者の流出入、医師の性別・年齢などを考慮して算出される指標で、数値が低いエリアほど相対的に医師が少ないことを示すものです(※)。
以下は、厚生労働省が2026年4月に公表した医師偏在指標のうち、上位・下位の5都道府県を抜粋したものです。
順位 | 都道府県 | 医師偏在指標 |
|---|
ー | 全国 | 266.8 |
1位 | 東京都 | 358.6 |
2位 | 京都府 | 326.6 |
3位 | 福岡県 | 320.4 |
4位 | 岡山県 | 302.7 |
5位 | 沖縄県 | 300.3 |
… | … | … |
43位 | 埼玉県 | 207.2 |
44位 | 新潟県 | 201.7 |
45位 | 岩手県 | 200.4 |
46位 | 茨城県 | 197.5 |
47位 | 青森県 | 194.4 |
出典:厚生労働省|医師偏在指標(令和8年4月公表)都道府県別
2026年4月に公表された医師偏在指標では、全国値が266.8となっています。都道府県別に見ると東京都が358.6と最も高く、次いで京都府の326.6、福岡県の320.4と続きます。最も低いのは青森県の194.4で、東京都とは160ポイント以上の開きがあります。
なお、単純な人口10万人あたりの医師数では、徳島県が最も多く、埼玉県が最も少なくなっています。医師偏在指標では人口だけでなく、地域の医療需要や患者の流出入なども考慮されているため、人口あたりの医師数とは順位が一致しません。
Uターン・Iターン転職を検討する際は、転職先の医師数に加えて医師偏在指標なども参考に、地域の医療需要や医師の充足状況を確認するとよいでしょう。
※医師偏在指標は医師の絶対的な充足状況を示すものではなく、あくまで地域間の相対的な偏在を示す指標です。数値だけで「医師が足りている・足りていない」と判断できるものではない点には注意が必要です。
医療圏による差
加えて注目すべきポイントは、同じ都道府県内でも医療圏によって医師の偏在状況が大きく異なる点です。
例えば東京都の「医師偏在指標」は、都道府県単位では全国トップの358.6。しかし、二次医療圏別に見ると、区中央部が772.4であるのに対し、西多摩は143.6にとどまります。茨城県でも、つくばは367.5ですが、常陸太田・ひたちなかは130.4です。
都道府県 | 指標が高い二次医療圏 | 指標 | 指標が低い二次医療圏 | 指標 |
|---|
東京都 | 区中央部 | 772.4 | 西多摩 | 143.6 |
茨城県 | つくば | 367.5 | 常陸太田・ひたちなか | 130.4 |
埼玉県 | さいたま | 250.5 | 利根 | 147.1 |
京都府 | 京都・乙訓 | 396.9 | 山城南 | 149.5 |
島根県 | 出雲 | 418.0 | 雲南 | 155.4 |
このことからも、単純に「都市部は医師が多く、地方は少ない」とはいえないことがわかります。大学病院などの医療機関が集まる地域では指標が高い一方、そこから離れた地域では低くなる傾向があり、東京都や埼玉県などの首都圏にも医師偏在指標の低い医療圏があります。
Uターン・Iターン転職を検討する際は、実際に勤務を考えている地域の二次医療圏まで確認しておきましょう。そこまで見ることで、地域の医療事情を具体的に把握できます。
また、医師の偏在を是正するために、国は特に対策が必要な地域を「重点医師偏在対策支援区域」として、優先的・重点的に支援する方針を示しています。支援の内容として想定されているのは、診療所の承継・開業や医師派遣、医師の勤務・生活環境の改善などです。
転職先を検討する際は、こうした支援の対象地域かどうかも参考にしてみましょう。
医師のUターン・Iターン転職事例

Uターン・Iターン転職によって、医師の働き方や生活はどのように変わるのでしょうか。ここでは、両親の介護を見据えて地元へUターン転職した医師の事例を紹介します。
【転職前】
・診療科目:神経内科
・年収:1,600万円
・働き方:常勤週4日+非常勤週1日/当直・オンコールあり
【転職後】
・診療科目:内科全般+もの忘れ外来
・年収:2,000万円
・働き方:常勤週5日/当直・オンコールなし
40代の神経内科専門医であるN先生は、70代後半になった両親の介護を見据え、関西から地元の愛媛県へのUターン転職を決意しました。転職前は医局に所属し、大阪・京都・兵庫の病院を転々としながら勤務。当直やオンコール、夜間の呼び出しも多く、実家へ帰省できるのは年に1回程度でした。
そこで転職先を探す際には、「実家から車で1時間程度」「年収を下げない」「当直・オンコールなし」などを希望条件に設定。神経内科だけに限定せず、これまでの経験を活かせる一般内科の求人も含めて検討しました。
転職前は当直を含めて年収約1,600万円だったところ、転職後は当直・オンコールなしの週5日勤務で年収2,000万円にアップ。実家から1時間ほどの場所で暮らせるようになり、両親を支える環境も整いました。
また、転職後は一般内科に加えて週1コマのもの忘れ外来も担当するなど、働き方を変えながらも、神経内科専門医として培ってきた臨床経験を生かせる環境を実現しています。
▼事例の詳細はこちら
年収2,000万のUターン転職!40代神経内科専門医が1,600万から当直なしで収入を上げた成功例|メクキャリエージェント転職事例
このように、希望条件を整理して探すことで、働き方と年収の両方を見直せるケースもあります。
【あわせて読みたい】医師が転職を考える理由10選!転職すべき人の特徴や伝え方のポイントも
Uターン・Iターン転職を進めるときの3つのポイント

医師のUターン・Iターン転職では、転職先の情報はもちろん、動き出すスケジュールや地域の医療事情についても事前に下調べをしておくことが大切です。
ここでは、Uターン・Iターン転職を進める際に押さえておきたい3つのポイントを紹介します。
- 動き出す時期を逆算する
- Uターン・Iターン先の地域を調べる
- 転職エージェントを活用して情報を集める
それぞれのポイントを、順に解説します。
1. 動き出す時期を逆算する
Uターン・Iターン転職では、希望する入職時期から逆算して早めに準備を始めましょう。特に医局に所属している場合は、医局人事のサイクルや後任医師の確保などを考慮する必要があります。
退局までの調整には時間がかかるため、できれば希望する入職時期の1年半〜2年ほど前から情報収集や準備を始めるのが理想です。退局の意向を伝える時期についても、医局人事のサイクルを踏まえて早めに検討しましょう。
また、遠方への転職では、病院見学や面接のために休暇を確保する必要があります。退局・退職に必要な期間に加え、求人探しや病院見学、面接にかかる時間も見込んで、余裕を持って転職活動を進めましょう。
詳しいスケジュールの立て方や退局のタイミングについては、以下の記事をご覧ください。
医師の転職で最適なタイミングは?避けるべき時期やスケジュールも解説
医局を辞めるタイミングは?専門医取得への影響や円満退局の手順も解説
2. Uターン・Iターン先の地域を調べる
希望する地域が決まったら、該当エリアの医療事情についても調べておきましょう。前述した「医師偏在指標」や二次医療圏ごとのデータを確認すると、該当エリアの医療需要や医師の偏在状況を把握する手がかりとなり、Uターン・Iターンで転職先を検討する際の参考になります。
自治体によっては、勤務医を対象とした赴任手当やUターン支援のほか、診療所の開業・承継を支援する制度など、医師の確保を目的とした独自の支援制度を設けています。
例えば茨城県神栖市では、常勤医への赴任支援のほか、地元出身医師のUターン勤務に対して1年目〜5年目に毎年100万円を交付する制度も。希望する地域で利用できる制度がないか、対象者や条件を確認してみましょう。
参考:神栖市若手医師きらっせプロジェクト|医師・医療機関への就業支援
3. 転職エージェントを活用して情報を集める
遠方への転職では、自力で現地の情報を集めることが難しい場合がほとんどです。Uターンで地元に戻る場合も、病院の勤務体制や職場環境までは詳しく把握していないケースが多いのではないでしょうか。
そこでおすすめなのが、医師専門の転職エージェントの活用です。エージェントを利用すれば、Web上には掲載されていない求人を紹介してもらえる可能性があります。さらに、勤務体制や職場環境など、求人票だけでは分かりにくい情報を得ることも可能です。
また、年収や勤務日数、当直・オンコールなどの条件交渉を任せられることも大きなメリットです。遠方の病院を検討している場合には、帰省のタイミングに合わせて複数の病院見学や面接を調整してもらうなど、移動の負担を抑えながら転職活動を進めることもできます。
Uターン・Iターン転職では、現地の情報収集やスケジュール調整も重要です。希望する地域の求人や働き方について情報を集めたい段階から、医師専門の転職エージェントに相談してみるとよいでしょう。
医師のUターン・Iターン転職は地域の状況を確かめてから決めよう

Uターン・Iターン転職には、働き方や収入、生活環境を改善できる可能性があるほか、地域医療に貢献できるメリットがあります。一方で、地域や医療機関によっては、携われる医療や勤務体制、家族の生活環境が大きく変わることも少なくありません。
Uターン・Iターン転職を成功させるには、希望する地域の医療事情や実際の勤務体制を事前に把握し、自分が転職で何を実現したいのかを明確にすることが大切です。遠方への転職では情報収集や病院見学にも時間がかかるため、希望する転職の時期から逆算して、余裕を持って準備を進めましょう。
Uターン・Iターン転職を検討している先生には、医師専門の転職エージェントの活用がおすすめです。メック模試でおなじみのメックグループが運営する「メクキャリエージェント」は、一人ひとりの希望する地域や働き方、これまでのキャリアに丁寧に向き合い、転職後のキャリア全体を見据えた提案をいたします。
さらに、先生のスキルや希望に合わせて、各領域に精通したコンサルタントが病院側と直接交渉するオーダーメイド求人が強みです。Uターン・Iターン先の求人を知りたい方や、まずは現地の情報を集めたい方も、ぜひお気軽にご相談ください。
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